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熊情制作
動画集
(Youtube)
当センターが過去に制作した聴覚障害者向け映像をYoutubeで公開しています。どうぞご覧ください。
 
   
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あきらのほのぼの日記
  
  一般財団法人 熊本県ろう者福祉協会
    常務理事  松永 朗
  1937年9月2日 長崎県佐世保生まれ。
終戦3ヶ月前に脳膜炎で聴力を剥奪される。その後、一般の小学校に3年通い、熊本聾学校に転校。
聾学校卒業後、紳士服仕立て職の雇い主がろう協の会長経験者で、ろう運動・福祉論の指南を受ける。
1992~2009年度まで熊本県聴覚障害者情報提供センターの所長を務める。
趣味は山歩き・読書・1日映画館を3軒はしごした映画好き。
 
 早くも2月になった。節分も終わり、北海道の恒例の雪まつりの最中である。そろそろ待ちに待った春来りなばである。吾が社会人として未熟でまだ若かりし頃「春来りなば」という映画があった。ストーリに間違いがなければこういうことである。



 ある田舎町の酒癖の悪い父親がいた。3歳になる幼い娘は、交通事故のショックで声が出なくなる。父親は責任の呵責により二人の子供と妻を残して家出する。8年の放浪を清算して家に戻る。3歳の時に家出した父親は、11歳になっていた娘には赤の他人に見えた。そこで事実上は父親だが「妻の使用人」と言うことで同居する。父親は、壊れた納屋や古くなって動けない車を修理するなどして昔の酒癖の悪い男から家庭的な父親になっていく。
 ある日、娘が行方不明になった飼い犬を探しに行ったが戻らないので、町内の人たちによる捜査隊を組み、父親の指揮で娘の行方を捜すことになった。すると断崖のところにある木を抱き着くようにしていた娘を発見する。父親が危険を顧みず娘を助け出す。この時、一同は娘が助けを求める声を聞いたというので、声を出すように促すと娘は声を出すようになっていた。父親は「春遠からじ」を感じた。というものである。



 生きるか死ぬか切羽詰まった危機に遭遇した時など、発語が充分にできない聴覚障害者も、いざという時は助けの声を発語するだろうと思う。地震によるがれきの中、倒壊した家の中に閉じ込められた時など、助けを求める場合、音声が正常ではなくても精いっぱい思い切って声を出し、人が生存していることの情報を発信することが重要と思う。声が出せないなら、身近にある物をたたいて人が生存していることの情報発信も必要と思う。こうしたことを聴覚障害者より圧倒的多数の健聴者やその社会に理解を促すこともまた大切だろう。気になるのは高齢聴覚障害者である。体力的にも精神的にも衰えているので、前述のような非常事態の中で助けを呼ぶ術を活かせるかである。考えておくべきだろう。
 今、手話言語条例の制定に取り組んでいるが、このことも明記するかどうか考える価値はあると思う。いろいろとまだ解決を要するもの、制度の確立などがあるが、聴覚障害者の〝春遠からじ〟を感じるのはいつになるのだろうか。